グランドソフトボールがルイビルにやってきた夏


  去る、2006年7月29日(土) 午後1時より、ルイビルのBellarmine University におきまして、グランドソフトボールの大会が行われ、非常に多くの感動を残して幕を閉じました。
まだまだ知名度が低く、メジャーなスポーツとしては認識が薄い様ですが、当日ボランティアとして参加したJapan Clubの皆さんから、たくさんの声をいただきましたので、是非、ご紹介したいと思います。

  グランドソフトボールは、日本では、国体の身体障害者の競技として、行われているそうですが、パラリンピックの公式競技にすべく、世界各国に広める運動を開始し、海外では、初めて今回ルイビルで公開試合が行われました。日本で生まれたグランドソフトボールを、野球の本場の米国にまず紹介したいという主旨だそうです。
  きびきびとした選手達やそれを支える全国から集まったボランティアの方々から、グランドソフトボールを世界に広めたいという意欲が、ひしひしと伝わってきました。
  今回のルイビル訪問をきっかけに、更に活発な広がりになることを祈念して止みません。
  今後、ルイビルでお手伝いできるものがございましたら、積極的に参加したいと考えます。

                          ジャパンクラブ会長:竹内浩一


試合前の打ち合わせ。
言葉の壁を乗り越えて、
コミュニケーションを深めます。
記念すべき
アメリカ初の試合!
さぁ、プレイボールです。


大人も子供も大興奮!
小さな女の子も果敢に挑戦!

心地良い疲れを感じながら
初の海外遠征を祝って
全員で記念撮影!




グランドソフトボール(Grand Soft Ball)競技概略

グランドソフトボールは日本で70年の歴史を持つ競技です。視覚障害者のための野球(ソフトボール)で、ルールはソフトボールと同じですが、視覚障害者のための工夫がされています。そのうちのいくつかをあげてみます。

1チーム10人の中に全盲選手(アイシェード装着)が4人以上いる必要がある。残りは弱視選手。
ピッチャー(全盲選手)はキャッチャーが手を叩くのを聞いてボール(ハンドボール)を投げる。ホームベースまで3バウンド以上しないとボールになる。ちなみにストライクゾーンは高さは違うが幅は普通のソフトボールと同じ。
走塁もソフトボールと同じだが、ぶつかり合いを避けるために走塁用ベースと守備用ベースが分かれている。全盲選手はランナーコーチが言葉や手を叩いて誘導する。
全盲選手がボールが動いている間に捕球すればゴロであってもアウトになる(フライを捕ったのと同じ扱い)。この場合、弱視選手が言葉で方向の指示をしてはいけない。
他にもいろいろな工夫がされており、全盲選手も弱視選手も共に楽しめるスポーツです。また、観客もソフトボールの試合を見る感覚で試合を楽しむことができます。

競技概略ではありませんが・・・晴眼者でソフトボール(野球)を知っていれば簡単にプレーできるかと思うと大間違い。当日2試合目に1チーム3人ずつ6人の晴眼者がチームに混じったのですが、竹内順君(ホームラン)以外はちゃんとしたヒットが打てませんでした。(ばらしちゃってごめんなさい。)アイシェードをしていたわけではなく、ちゃんと見ていたので、皆バットには当たるのですが、ピッチャーの投げる球が速い!振り遅れているのか、振り負けているのか、今ひとつ当りがのびません。また、弱視選手の守備の動きがよく、さっと取ってファーストに送球、アウトになってしまうのです。 なかなか奥が深いスポーツです。ご参考までに、全日本グランドソフトボール連盟のホームページを載せておきます。
   http://gurasofu.web.fc2.com/ (桑原)


目をつむった時に、人は視覚を失いますが、その分聴覚や嗅覚を初め、その他普段の生活の中では失われつつある感覚までもが研ぎ澄まされてくると聞いた事があります。
私達は、この「五感」という感覚が正常に機能する事を「天恵」とは思わず、あまりにあたりまえの事として受け止めて、日々安穏と過ごしすぎているのではないでしょうか?
このグランドソフトボールに参加している選手の皆さんは、本当に活き活きとしてみえました。それは、彼らが自分のおかれた境遇に屈する事なく、むしろ果敢に挑戦して、その向こうに自分達にとっての「夢」を、明確に己の「心眼」で見据えているからに他ならないのだと思います。
「百年かけてでもこのグランドソフトボールをパラリンピックの競技にしたい。」 この大きな夢を語って聞かせてくれた選手は、我々に忘れかけていたなにかを教えてくれました。そして「僕達の夢をかなえるのを手伝ってくれてありがとう。」と語ってくれた別の選手の言葉は、順さんの胸の中に、「ボランティア」という活動の真の意味=人の喜びの助けに自分が役立てる事で、それがより大きな自分の喜びとなる という事を刻みつけてくれたのではないかと思います。
「目に見えない物をみて、耳に聞こえない音を聴く」ある著名な音楽家の言葉ですが、私も、今もう一度自分の「心の五感」を研ぎ澄ませる努力をしないといけないな…と、そんな事をこれらの「声」を通じてあらためて感じました。
今から来年の夏が楽しみですね。選手とボランティアの皆さん、またルイビルでお会いできる機会を楽しみにしています。
    (伊藤/編)

グランドソフトボールに参加して…
                                竹内 順
  グランドソフトボールは全盲と弱視の人達のためのスポーツだ。その選手団が七月二十九日にルイビルでエキジビションマッチを行なった。この来米の目的は日本でできたグランドソフトボールをアメリカに広めるためだ。僕はこのイベントにボランティアとして参加できて本当に楽しかった。

  まず驚いたのは、選手の人達の明るさと元気のよさだ。グラウンドは立っているだけで汗が噴き出てくるほど暑い。なのに選手の人達は試合中ずっと声を出していた。バッターボックスにバッターが入るたびに、「全盲、右!」や「弱視、右!」などと全盲の守備の選手に知らせていた。「このバッター打てんぞー!ピッチャーゆっくり投げてやんなー!」などと冗談を言いながらもみんな真剣で、ボールに飛びついたりスライディングしたりして、ユニフォームが泥だらけになるぐらい一生懸命プレイしていた。見ているだけで彼らのエナジーが感じられた。

  アイマスクをして全盲として球を打つという体験ができるという時間があった。僕もトライしたが、かなり難しい。アイマスクをしているので耳だけを頼りにしないといけない。よく耳をすませばボールが地面をこする音は少しだけなら聞こえる。しかし距離感がつかめないので、振るタイミングが分からず打てない。試合を見ていると、全盲のランナーは全力で走っていたし、スライディングもしている。僕もアイマスクをして少し歩いてみたが、怖くてすぐにやめた。まず目が見えないと、地面がでこぼこでもそれが分からないし、自分の前に何か物が置いてあったりしても気が付かない。こけるのが怖いのですぐにアイマスクを外した。だから全力で走ったりスライディングなんて思いもよらない。目が不自由だと自分が普段何気なくやっていることでも難しくなってしまうということを実感した。

  「百年かけてでもこのグランドソフトボールをパラリンピックの競技にしたい。」 と、選手の一人の兵後さんが僕に言いました。これは兵後さんだけの夢でなく、この選手団全員の夢だそうだ。だから日本でしか知られてないグランドソフトボールをアメリカでプレイすることは、その夢への大きなステップだったと思う。試合が終わった後に別の選手から「僕達の夢をかなえるのを手伝ってくれてありがとう。」と言われた。でも僕は逆にこの人達にお礼を言いたい。目が不自由だと日常生活で困ることが多いと思う。でも彼らがプレイしている姿を見ているとそんな暗い雰囲気なんて全く感じられない。どんな困ったことが起きても、明るささえあれば乗り切ることができる。彼らを見てそう思った。この夢が少しでも早く叶って欲しい。そして世界中の目の不自由な人達にグランドソフトボールを楽しんでもらいたい。


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